ミシガン大学公共政策大学院留学記: 見当たらない日本経済の処方箋

2009年4月26日日曜日

見当たらない日本経済の処方箋

IMF World Economic Outlook April 2009によれば、2009年の世界経済成長率は-1.3%と大幅な下方改定となり、戦後最悪の景気後退となる見込みとのこと。世界経済は金融危機による世界同時発生の景気後退の経験に乏しく、先行きは不透明というのが本音なのだろう。

一昨日のG7コミュニケでは、4月2日に金融・世界経済に関する首脳会合があったばかりなので、合意部分に大きな進展は特に見られなかったが、
"Recent data suggest that the pace of decline in our economies has slowed and some signs of stabilization are emerging. Economic activity should begin to recover later this year amid a continued weak outlook, and downside risks persist."
と、現状認識を述べていることにポイントがあると思う。

「足許の指標は景気減速の速度低下と安定化の兆しを示している」という部分を深く読み込む必要があると僕は考えていて、その心は、あくまで「回復の兆し」とは言及していないこと。足許の株価の動向はそこまで良いと言えない経済指標を手かがりに妙な「高止まり」と「安定」をしている節があるが、「景気回復はまだ始まっていないのだ、引き続き政策支援は必要だ」という意思がこの文章の裏側にあるように思う。

それでは、政策支援はどうあるべきかということになるのだが、IMF World Economic Outlook April 2009の第3章に、1960年以降の景気後退とその回復過程に関する分析があり、興味深い(ちなみに、先週号のThe Economistもよく引用していた)。要旨は、以下のとおり。
  • 金融危機を原因とする景気後退と世界同時発生の景気後退は、その他の景気後退と比較して、厳しく、長期間にわたり、回復に至るまで時間がかかる。
  • 金融危機を原因とする景気後退は大抵外需ないし政府支出により回復し、また、世界同時発生の景気後退では貿易の縮小が生じる。したがって、今回の景気後退は金融危機を原因とする世界同時発生の景気後退であり、外需に基づく回復はありえない。政府支出が必要。
  • 時系列データを利用した重回帰分析を行うことで、通常の景気後退においては、金融政策が有効であり、財政政策は有効ではないが、金融危機を原因とする景気後退においては、金融政策は波及経路が阻害されているため機能せず、逆に財政政策が有効であることを実証。しかし、公的債務残高の対GDP比率が高いと財政政策の効果が失われることも判明。
少し残念なのは、重回帰分析モデルの説明力を示すRスクウェアの値が0.1~0.4程度であり、実証としては弱いところ。ただ、金融安定化策と保護主義への対抗以外にはこれしかマクロ政策が存在しないというところか。

日本は巨額の財政赤字を抱える中で、G7の中でも最大規模の経済対策を打っている。IMFは「財政赤字が大きいと財政政策の効果がない、中期的な財政健全化のコミットが必要」と主張しており、また、2009年の日本経済成長率を-6.2%と予測するが、今後どうなるか引き続き注目していきたい。

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