ミシガン大学公共政策大学院留学記: 新型インフルエンザの経済効果

2009年5月2日土曜日

新型インフルエンザの経済効果

今週のThe Economistは新型インフルエンザを保健と経済の両面から論じている。 まず、保健の観点からは、
  • インフルエンザは他のパンデミック(エイズ、結核、マラリアなど)と比較して感染しやすく、同時期に感染している感染症と遺伝子の交換が生じ、突然変異が起こりやすいため、パンデミックを引き起こす可能性が高い。今回の新型インフルエンザもその兆候があり、世界的に流行する可能性がある。
  • 新型インフルエンザがスペイン風邪と同程度の毒性を持っている場合、世界で6,200万人の死者が出、その96%は低中所得国に集中。
  • 鳥インフルエンザやSARSの発生により感染症監視システムの構築、保健監督官庁間の連携強化、薬品の備蓄が進んでいるが、新型インフルエンザに対処するためには新たなワクチン開発が必要不可欠。
一方、経済の観点からは、
  • 世銀の推計によれば、新型インフルエンザはスペイン風邪と同程度の死亡率であれば、世界全体のGDPは-4.8%の影響を受ける。
  • そのメカニズムは、今後の感染症拡大に対する懸念から個人消費・企業投資の縮小と、死亡や入院による生産力の低下である。
  • ただ、現在は景気後退期にあり既に失業者が出ているため、新型インフルエンザがパンデミックとなっても、生産力の低下の影響は少ない。しかし、一度パンデミックとなれば、世界経済は負の影響を受ける。
と評価している。

新型インフルエンザの経済効果の分析は目新しい感じがする。当然、この問題は如何に世界的な感染を食い止めるかが中心課題であって、そのための取組が最優先されるべき。ただ、これだけの経済危機に面している中で、パンデミックが経済にどういう影響を与えうるのかという分析も必要なのではないか。

そうした中、経済危機がパンデミックの負の影響を緩和してしまうという逆説的な面はあるものの、更なる景気後退を招来してしまうことは、経済政策の観点からもより明示的に認識されるべきことだろうと思う。そうした認識からは、こうした社会的経費が発生しうるのであれば、少なくともその限度内でパンデミック対策を打つことが正当化されうる。もちろん、保健政策の観点からは、パンデミックは人命に関わる危機である以上、それ以上の正当化が可能なのはいうまでもないことではあるが。

こう考えてみると、この問題も以前論じた価値観と経済学の対立の問題を孕んでいる。すべての社会的な問題は経済につながるが、経済的観点からだけでは問題解決は不可能で、価値観の対立の問題を避けて通ることができないのかもしれない…

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