ミシガン大学公共政策大学院留学記: 今後の金融政策の行方

2009年5月6日水曜日

今後の金融政策の行方

現下の金融危機後の金融政策の行方について、The Economist April 25th 2009が取り上げていた("The monetary-policy maze")。若干鮮度は落ちるが、今後の金融政策の行方を考えていく上で興味深い。要旨は以下のとおり。

  • 中央銀行の仕事は、危機以前は"one tool, one target"、つまり短期金利の調節により物価の安定を達成することであった。しかし、危機発生後、銀行間信用すら崩壊してしまったため、中央銀行は"lenders of last resort"から"lenders of first resort"へと変貌。担保適格要件の緩和・オペ対象の拡大・オペ期間の延長などを実施。
  • 中央銀行は危機終了後に"one tool, one target"への回帰を望んでいるが、実現は困難。手法の観点からは、弱い回復過程の中、特に企業や政治家からの圧力が加われば、緩和を終了することは困難。目標の観点からは、バブル崩壊はデフレを引き起こし、中央銀行は非負制約によりその対応が困難であるため、物価の低位安定という目標設定自体、疑問。
  • 中央銀行が現在のインフレ・ターゲットを放棄する可能性は低いため、現実にはマクロプルーデンシャル政策の採用によりバブル発生を抑制しようとするだろうが、伝統的な金融政策と同様の困難に直面。

金融緩和は、当記事の指摘どおり、危機終了後すぐには終了することはできないだろう。政治的圧力は別段としても、Fedの資産規模は、金融緩和の結果、リーマンショック以前と比較して優に倍を超える水準となっており、市場に影響を与えない形で民間金融機関による信用供与へと移行するのにはやはり相当の期間が必要となる。

信用供与に際し中央銀行のB/Sの介在は不可欠といった社会主義的な金融市場となってしまっている以上、市場主義的な金融市場への復帰は政治的にも経済的にも厳しいものとなるのではないか。

また、今後の金融政策の運営のあり方については、バブル発生を事前に抑制すべきか、という論点と密接に絡む。バブル発生の事前抑制は、健全な成長過程においても過度の金融引締めを誘発しかねないため、望ましくないと考える。また、実際にバブル発生を事前に抑制しようとしても、現実的にはその達成は困難だろう。

したがって、バブル崩壊後のデフレにどう対処するかについて議論する方が有益だと考えるが、日本の「失われた10年」の経験からしても、デフレ脱出策は困難を極める…。

僕の思考も、当記事と同じく、「金融政策の迷宮」に迷い込んだようだ。

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