ミシガン大学公共政策大学院留学記: スティグリッツ・リポート

2011年1月23日日曜日

スティグリッツ・リポート

毎週1冊は本を読むという目標を立てていたので、とりあえず2週間かけてスティグリッツ・リポートを読み終えた(最初から目標倒れ感が否めない…)。これは金融危機への対応として、デストコ国連総会議長の呼びかけによって作られた専門家委員会によって書かれたもので、その委員長がスティグリッツというわけ。各国から色々な人が専門家委員会に入っていて、日本人だと元財務官の榊原さんが委員にいる。もっとタイムリーな時期に読んでおけばよかったかなという気がするが、まあ仕方ない。

内容としては、個別具体的な改革案というよりかは、金融規制改革、国際機関の投票権改革をはじめとする国際金融システムの改革案のバックボーンとなるべき思想を提示している。個人的に新鮮だなあと思ったのは、この問題を経済開発の問題に結びつけて説明ないし思想の表明をしているところ。こういう切り口でこの問題を眺めたことはなかったなあ。その上で、G20なんて枠組みもまだまだ全世界を代表できていないと指摘していて、すべての国が投票権に歪みない状態で加盟し、危機時に資金を融通する国際機関を作るべきとか言っていたりする。まあ思想としては美しいかもしれんけど、結局ある程度少数のコアグループじゃなきゃ意味ある議論なんてできないし、現実問題としてIMFが存在する以上、その改革を飛び越えて物事を進めようなんて、ちょっと常軌を逸している。そのあたりがいかにも国連の優等生的・自己拡張的な思想がちらちらと垣間見えて、鬱陶しい。ただ、どういう経済思想でこの問題を眺めるかを再度考え直すきっかけになったので、それはよかったか。

そういえば、榊原さんはうちの大学の経済学博士号を持っているので、先輩ということになるんだなあ。年末も旅行先でテレビに出ていて、討論とかしているのを見かけたので、やっぱアメリカでもそこそこ顔が売れているおじさんなんですかね。

2 件のコメント:

  1. ブログ主さんも、30年後・40年後にはそういう専門家レポートに名前を連ねているんでしょうね・・・気の遠くなるような先の話ですが、期待してます。

    榊原先生はPhDホルダーで、日本政府の元高官としてのステータスを持っている他、メディアでも積極的に発言される方なので、欧米の報道関係者から見ても使い勝手が良いアジア経済・市場の専門家なんだと思います(CNNのアジア経済・金融市場動向のセクションでインタビューに答えているのを私もみたことがあります)。

    総会議長の諮問委員会に名前を連ねたのは多分スティグリッツが世銀のチーフエコノミストだった時期に榊原先生が財務官をなさっていたので、お互い面識があったからだろうと思ってます(もちろん日本政府への政治的な配慮もあったのだろうと思いますが)。

    経済社会理事会に世銀・IMFのコントロール(=生殺与奪)権を与えるべきだというような主張は改革案として随分昔の文書で見た気がしますし、両機関への批判的な見方(とやっかみ)は国連の経済社会開発系の機関では根強いという印象があります。専門家としてわざわざスティグリッツをヘッドに据えた時点で、その系譜に連なるレポートになるような予感はしましたが・・・。

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  2. >匿名さん
    コメントありがとうございます。ははは。将来そういう専門家レポートに名前を連ねることができればいいですけどね。いずれにせよ、毎日地道に精進していくしかないので、頑張っていきたいと思います。

    榊原さんは確かに歯に衣を着せない物言いをする人なので、メディア受けはいいかもですね。英語はそこまでうまいというわけではないですが、あれだけ自分の意見をズバズバと言っているのを見ると、さすがだなあと思ってしまいます。そりゃ国益を背負って国際交渉してた方なので、当たり前と言えば当たり前ですが。

    おっしゃるとおり、国連の経済社会開発系は昔からブレトンウッズ機関がお嫌いでしょうね。自分たちの専門分野で大きな顔されてるわけですから。ただ、ブレトンウッズ機関が機能不全を起こしているという指摘は否定できないでしょうから、いかに変わりゆく世界経済に対応していくかということでしょうね。例えば、IMFも元は通貨制度維持・経常収支調整がその仕事だったわけですが、取り巻く環境も実際の仕事も変わって行っている以上、明示的にその役割を再定義すべきと思います(実際、内部ではそういう作業が進んでいると思いますが)。

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